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「利きコーヒーをします」
「利きコーヒーかぁ、おもしろそう」
僕の渾身の提案にも、千鶴さんは特に驚いた様子は見せずに、ただにこりと笑うだけだった。
とりあえず即却下を受けなかったことに胸をなでおろす。
「今から僕が、四種類のコーヒーを用意します。その中から、普段飲んでいるコーヒーを当てることができたら、千鶴さんの勝ちです」
「いいねぇ、望むところだよ」
なんとなく僕に有利な条件という気がしなくもないけど、千鶴さんは真っ向から受けて立つ姿勢を取った。
自信があるということなのだろうか。
「ちなみに、今回用意するのは、いつものインスタントコーヒーと、ドリップ式のコーヒーと、缶コーヒーと、この前試しに買ってみた、コーヒー屋さんのちょっとよさそうなコーヒーの四種類です」
「準備がいいねぇ。缶コーヒーだけは見抜かないとね」
飲み比べる四種類を提示しても、依然として楽しそうな表情を浮かべる千鶴さん。始まる前はだいたいいつもこうか。
勝てそうかどうかは考えずに、勝負が始まったら全力を尽くす。それが千鶴さんのスタンスだ。
そして千鶴さんの言う通り、缶コーヒーを僕が淹れるものと判定されてしまっては悲しい。
勝負に勝っても試合に負けた、みたいな感じだ。違うか。
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