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「おうおう、やってんねえ~。 男の取り合いか、勇者さんよ? 兄ちゃん、モテんねぇ」
「え…………誰?」
怪訝な表情で疑問を口にすると、茶色の短髪を逆立てた、筋肉隆々のオッサンが豪快に笑い飛ばしてきた。 なんというか、とても気風が良い。 俺はそのオッサンの豪快さに、つい釣られ、苦笑をしていたのだが。
「ちょっと、グレアム! 邪魔しないでよ!」
ノエルが止めに入ったオッサンに怒りの矛先を向けた。
ああ、このオッサンがグレアムなのか。 確かに酒が何よりも好きそうだ。 背負っている、オッサンの二メートル近くはありそうな身長より少し小さい鋼鉄の大楯が武装なのだろうか。 だとしたら前衛だな。 うちのホノカより断然強そうである。
そのグレアムさんだが、まるでノエルの父親みたいな感じで…………。
「折角来てくれたんだろ? だったらそんな事、言うもんじゃないぜ大将よ」
「ぐぬぬぅ…………!」
凄いな、あのノエルが言うことを聞いている。 だがやはりノエルは腹の虫が収まらないのか、アイネさんの手を振り払い、俺の手を取ると。
「う、うるっさいなぁ! もう行こ、ルシア!」
「うおっ!」
ルーネ達と距離を置かせようと、ルーシッド洞窟のある崖へと走り出した。 俺も走らざるを得なく走り出すと、それをよしとしないルーネが追ってくる。
「お待ちなさい、ノエルさん! ルシアさんの手を離して!」
「いーやーだーね!」
…………まだ仕事前なのに、早くも疲れてきた。 もうなるようになれと、ノエルに身を任せる。 するとダンジョン手前までやって来た時、ある男と目が合った。 とても嫌な野郎に。
向こうも同じなのか、俺を汚物を見るような目付きで、悪態を吐く。
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