修羅場る

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「ちっ、本当に来やがったのかよ、クソが」  久しぶりに会ったってのにご挨拶過ぎるだろ、シールよ。  まあ俺もお前なんかと会いたくは無かったがな。 「うるせえな…………俺だって会いたくて来た訳じゃねえよ……。 仕事だからな……」 「はっ! てめえみてえな雑魚が来ても、大した役に立たねえだろ! さっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな! ああ、そういえば…………てめえの母親はレイプされた上で、殺されたんだったな! 確か見殺しにしたんだったか、ルシアくんよぉ!?」 「っ…………!」  シールは、その人を見下す態度や、口汚い言葉には昔から腹が立っていたが、今回は度を過ぎている。   俺の事はどう言われようと構わない。  けど、命を賭して救ってくれた母親をけなされるのだけは流石に勘弁ならなく、俺は右手を拳に変えた。 「この…………!」  勝てるかどうかは関係ない。 でもどれだけ勝ち目がなくとも、一発殴れるならそれで良い。 「この、クズが……っ!」  俺は拳に怒りを乗せ、地面を思い切り蹴出そうとした。 「ああ? ルシア、正気かよ? てめえが俺に勝てるわけねえだろうが! 一度だって俺に…………」  が…………。 「ルシア、こいつ殺すわ。 手、離して貰って良い? 名残惜しいけど」 「勇者なのに人、殺しちゃ駄目だって」  当人以上に怒りを表しているノエルを見て、冷静になった。 左手に携える聖剣を握り締め、殺さんばかりにシールを睨み付ける様から、手を離したら本当に殺しそうである。 なので離さないでいたら。
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