修羅場る

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「ルシア…………そんな強く握っちゃ駄目だよ……な、なんかドキドキしちゃうから……」 「だ、だってお前キレてるし……」 「当たり前でしょ! ルシアがずっと苦しんでたの、知ってるもん! 私はルシアを傷つける人、許せないよ!」 「ノエル…………」 「クソが…………見せつけやがって…………」  シールが俺とノエルの仲を僻み、あちらも殺さんばかりに睨んできた。   うむ、あの様子からして進展してるとは言い難い。  「なに睨んでんのよ。 ぶっ殺すわよ」 「ちっ……!」  というか、前より険悪になってるな。 仲良くなるとは思えなかったが、予想以上にムードが悪い。 ふむ…………グッジョブ。 と、内心喜んでいたらーーーー 「調子乗ってじゃねえぞ、グズルシアが……」 「…………っ」  わざと俺の肩に、肩をぶつけ、そのまま俺達が来た方向に去っていった。 それを見たノエルが、更にキレる。 「なんなのよ、あいつ! いっつも、ルシアにつっかかって!」 「あー、まあノエルと仲が良いのが腹立つんだろうなぁ。 逆の立場なら苛立ってたかも」 「なんで?」  やだもうこの娘、鈍すぎ。    日本とかいう架空の国の高校って所を舞台にしたライトノベルの恋にだけ鈍い主人公ですか? 「何でってなぁ…………」   教えたくないし、教える義理もない。   こう言ってしまうと器が小さいと思われるかもしれないが、ノエルに対する俺以外からの恋心はシャットアウトしたいのだ。  別に、ノエルが向こうに傾いてしまうんじゃないか、とか考えている訳じゃない。  ノエルはそんな軽い女じゃないと誰よりも信用している。   ただ…………俺が不安なだけなんだ。 
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