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「そ、それは~…………」
「さっさと行った方が良いんじゃないか? みんな待ってるだろ」
告げると、ノエルはキッと睨んできた。
「……っ! な、なんでそんな事言うのよ……。 私は今日から勇者で…………昼過ぎの宴の後はもう村を出ていっちゃうんだよ! ルシアは寂しくないの!」
それについては話が着いているだろうに。
ノエルは聖剣カラドボルグに選ばれた勇者なんだから仕方がないって。
そして俺はただの村人なんだから、ついていける筈がないって。
俺だってつらい。
だから広場に行かないようにしてるんだろうが。
「分かってるよ…………だからだろ。 もうお前は勇者なんだか………… …………つっ!」
頬に突然痛みが走り、徐々に熱くなる。
どうやらノエルに叩かれたらしい。
彼女の瞳から頬に涙が伝っている。
「ルシアのバカッ! もう知らない!」
ノエルは叫ぶと、睨んでいた瞳をギュッと閉じて俺の前から姿を消した。
俺はそんなノエルの後ろ姿を見つめながら、右手を握りしめ
「くそっ…………!」
と、悪態を吐いた。
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