元カレと再会します!

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きっとこれが一番言いたかったのだろう。圭人は深呼吸してすっきりした顔をしている。 圭人は朝日さんを『好きだから何してもいいと思っている人』と判断して、私を『流されて何もしない人』と判断して、その組み合わせの悪さを指摘している。 暴力というのは極端な話だ。実際彼はそんなことをしない。しかし私はきっと彼のしていることはなんでも好意的に受け取ってしまうだろう。モラハラされたってそれに気付かず疲弊していくだけ。受け身だから自分から助かるために動こうとしない。 「……まあ、決めるのは俺じゃない。でもお前らは事情あって結婚したんだろうから、その事情はさっさと解決して別れたほうがいい。相談してくれりゃうまいこと別れさせることだってできるし」 圭人だって別れさせたいからこんな無茶苦茶を言っているわけじゃない。経験者であって、私達がお互いを不幸にするから、別れてはどうかと助言してくれているのだろう。 しかし気になる事がある。 「『うまいこと別れさせる』ってなに?」 「離婚でイメージが悪くならないよう、他のスキャンダルで注目を分散させる。それができそうなナントカ砲のタイミングをいくつか知ってる」 スキャンダルの多いときを狙って離婚すれば、さほど話題にならずイメージも悪くならない。そこを気にして別れないようにしている私達には、ありがたいような惜しいような提案だった。しかしなんで圭人はそんなこと知っているんだろう。 「週刊誌記者に知り合いがいるんだよ。例えば、近々性犯罪関係で有名人が何人か捕まるらしい。俺は他にも流れるネタと時期を把握している。そこを狙って離婚すりゃいい」 「はぁ……」 人脈を使い、離婚するなら協力してくれる圭人。なぜそこまでして私達を別れさせたいのだろう。普通なら偽装結婚と見抜いてもふーんで終わるものなのに。 朝日さんも同じことを考えたのだろう。慎重に質問をする。 「圭人君は、どうしてそこまでして、俺達を別れさせたいの? まさか美夜さんのことを、まだ……」 その言葉に圭人は大きく震える。そして街灯しかないこの暗さでもわかるほどに顔を赤くした。 私達はその反応にはっとする。 しかし私だけはその反応を知っている。事務所の応接間で、『まだ付き合っているつもり』の演技をしていた時と同じだ。きっとこのあと彼は笑いをこらえるために小刻みに震えだす。 「圭人、そういうのもうやめてよ。演技とかいいから」 「ああ、バレたか」 どうしてちょくちょく事態をややこしくするような演技をするのか。本当に意味がわからない。 圭人はあっさりバレたのでつまらなそうに本当の『別れさせたい理由』を明かす。
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