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「二人が偽装結婚してるのってストーカー対策か。あとイメージとか。そんなん気にするの、馬鹿らしいよ。それで意地になった結婚生活で不幸になってほしくない。二人ともいい奴だから、そんなんに振り回されないで欲しいんだ」
照れくさそうに語る圭人。これははっきりとものを言う彼なりの好意なのかもしれない。
私達が相性悪くて、トラブルが避けられないから。だからお互いひどい目にあうから離婚してほしい、自分ならそれを手助けできるから、と。
「圭人、気持ちはありがたいけど……」
「おっ、タクシー来たぞ。ほら乗れよ」
タクシーが止まる。話している途中だというのに私はぐいぐいとタクシーへと押し込まれる。
「また後で連絡してくれ。運転手さん、お願いします」
タクシーに仕方なく乗って、圭人が行き先を告げる。よっぽど照れくさかったのか。
しかし別れさせたいというのは意外だ。ツンデレ的というか、厳しい親みたいな言い分だったけど。
それにしても、私ってそんなに何もしなかったんだろうか。朝日さんを好きな気持ちでいた。彼のために色んな事をやったつもりだった。でもまだ足りなかった。
もしも朝日さんが海外に行ったら、きっと私は連絡は取るけど会いにはいかないだろう。
そういうところがだめなんだ。これからは私から動いていかないと。
そう決意して、あれ?、と気付く。
私は受け身だったけれど、今それをなんとかしたいと考えている。それは朝日さんを好きってことなんじゃないか。
動き出したタクシーの中から背後を見る。朝日さんは困った様子で圭人と話をしていた。
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