騙された魔女

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騙された魔女

魔女は人々に忌み嫌われる存在だった。 だからイージュは魔女に生まれた自分が嫌だった。 『魔女に近付くんじゃないぞ』 『魔女を発見したらすぐ大人に言うんだ』 近くの村には人間が住まい生活を営んでいる。 そこに魔女の姿はない。 ただ魔女の存在は認知されていて貶し避けていた。 『おばあちゃん・・・』 『魔女は嫌われるから集団でいなさい。 イージュ、いいね?』 『うん・・・』 イージュは小さい頃、祖母にそう言われ育ってきた。 だから魔女たちは村はずれの集落で毎日を過ごしている。  「森で食糧を取ってきた。 みんなで分けよう」 魔女が少人数しかいないのは、人間に狩られたためだ。 個人と個人では強力な魔女であっても、どうにもならないことがある。 魔女は人間に危害を加えるつもりはない。  それでも魔女の持つ力は恐れられ迫害される。 食糧調達から帰ってきた仲間を迎え入れ、みんなで食卓を囲もうとしたその時だった。 「見つけたぞ!」 「そこにいるのは全員魔女なのか!?」 「「「ッ!?」」」 人間に見つからないようひっそり暮らしていたが、どうやら拠点がバレてしまったようだ。 鍬や鎌のような武器を持った数人の人間がぞろぞろと入ってきた。 「私のせいだ・・・。 ごめん、みんな・・・」  食糧当番で出ていた魔女を人間が森で発見し後を付けてきたらしい。 普段から気を付け尾行されたことのない彼女だけに責められなかった。  ただ遅かれ早かれこういった事態は起きるだろうと考えられていて、今その時が来たというだけだ。  「抵抗しますか!?」 「・・・しなくていい。 攻撃をしたら人間は更に魔女を敵視する。 皆が皆、自分や大切なものを守れる力を持つわけではない。 ここは大人しく言うことを聞くとしよう。   何、私たちが無害だと分かれば人間もきっと解放してくれる」 魔女の中で最年長の者がリーダーで、彼女がそう言えば皆は従うしかない。 だが誰もが不安を感じていて、泣き出してしまう者もいる。  魔女であっても万能の存在ではなく、寧ろ肉体的に言えば人間とほとんど変わらないのだ。 もし捕まってしまえば逃げられる保証はない。 「これで魔女全員かもしれないな。 拠点が見つかってよかったぜ」 「これから魔女狩りだ。 村の中心まで連れて行こう」 拘束されたまま中心部へと向かった。 「ようやくこの薬を使う時が来たとはな」 人間たちのリーダーらしき男が取り出したのは一本の小瓶。 いかにも怪し気な色の液体が揺れるにつれ波打っている。 不気味だった。  ただ抵抗することもできず魔女たちは薬を飲むことになってしまった。 「一週間以内にお前たちの身体は燃える。 これで魔女は全滅だ」 男はニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべた。 「魔女を牢屋へ連れていけ。 絶対に逃がすなよ」 それからは牢屋で監禁されていた。 一週間で勝手に死ぬという薬のため、放置していても問題ないと判断されたのだ。 しかし魔女たちは魔法を使い牢屋から逃げ出した。  薬の効果は正直分からないが、魔法を封じられてはいないのだ。 ―――・・・みんな、どうか元気で。 集団でいると気付かれてしまうため各々逃げていった。 生きられるのは残り一週間。 そのままジッとしたまま人生を終えるのは嫌だったため、人間に攻撃せずこっそりと抜け出したのだ。 ―――これから私はどうしたらいいんだ? 一週間以内に身体が燃えて死ぬのは確定している。 それはもうどうすることもできなかった。  そこでイージュは夢から目覚める。 見ていたのは確かに夢だ。 だがただの夢ではなく、実際の出来事を記憶のように見ていた。 ―――今のは、一週間前の・・・。 ―――魔女狩りに遭った時の夢を見ていたのか。 ―――よりによって辛い夢を・・・。  イージュは薬を飲まされてから今日までの日数を数えている。 あの時の男の言葉が正しければ今日にでも身体が燃えてしまう。 本当に自分の身にそのようなことが起きるのかと疑問もあるが、それこそ嘘をついても仕方がないだろう。 ―――今日で一週間・・・。 ―――よくここまで生き延びることができたな。 ―――でも私は今日で死ぬんだ。 ―――他の魔女はどうなったんだろうか?  誰とも会わないため分からなかった。 今でも人間は魔女が死んだのかを確認しに森へ来ることが多い。 だから下手に動くことはできない。 ―――人間に会うのが、怖い・・・。 『魔女が燃えているぞ!』という声は度々耳にしているため、徐々に仲間が減っているのだと分かっていた。 ―――今日もここにいることになるのか・・・。 イージュは怖くてひっそりと過ごしていた。 魔女の見分けがつく最大の特徴は耳。 耳が尖っていて長ければ魔女なのだとすぐにバレる。 ―――尖った耳を切り落とせればいいんだけど。 イージュは耳に触れる。 魔女はフードを深く被ることが多かった。 だがフード=魔女という風に思われているためすぐにバレるから隠しても意味がない。 人間は魔女と間違えられないようフードを被ろうとしない。 それでもイージュはフードを深く被り過ごしていた。   「今日最後の一日をどう過ごそう・・・」 そう思っていると草むらが動いた。 ―――ッ、誰だ? 薬の効果を待たずして、人間に住処もばれ殺されるのかもしれない。 咄嗟に臨戦態勢をとると、そこにはひょろっとした一人の村人の青年が現れた。 ―――村人か・・・。 彼は綺麗な緑色の髪をしていて目は澄んだ青色をしていた。
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