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「相席しても大丈夫ですか?」
低く優しい声が突然響いた。
振り返ると彼がそこにいた。
一瞬幻かなと思った。でも本物だった。
「どうしてここにいるの?」
「ここで働いてる」
「本当に?」
「本当に」
確かに彼はさっきの少年と同じ茶色いエプロンをしていた。とても似合っている。
「言ったろ、世界の果て行きたいって。それからドーナツ屋の店員さんにもなりたいって。だからふたつまとめてやってみることにしたんだ」
「そっか」
「世界の果てに来る旅費のために節約してたんだ」
「そっか」
彼の腕は少し逞しくなり、肌も少しだけ焼けていた。髪型も少し短い。声も少しだけ大きい。
手紙マニアで文庫本を抱えていた時とは少し変わったけど、やはり彼だった。
「今は休憩中なんだ」
隣の席に彼は座った。
片手にコーヒーを持っている。
「君からのカードを読んだよ」
僕は僕なりに勇気を出して喋り始めた。
「そう」
「僕の出したカードは読んだ?」
彼は目を合わせずに頷いた。
「あの時、書けなかった言葉を伝えたくてここに来たんだ」
話してもいい?と聞くと彼は首を傾げた。
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