世界の果てのミスタードーナツ

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僕達はミスドでおかわり自由のコーヒーを飲んだ。彼はいつもドーナツを食べた。だいたいシュガーレイズドだった。僕もつられて時々食べるようになった。 僕達は話をすることもあったけど、黙ってる事も多かった。そういう時は黙っているというよりは沈黙を楽しんでいた。 僕達はコーヒーとドーナツみたいに良い相棒に思えた。 「何の仕事をしてるんですか?」 僕が聞くと彼は少し困ったような顔をした。 仕方なく自分の話をすることにした。 「僕はデザイナーをしてるんです」 「そうなの?」 「実はあのポスターも僕がデザインしたんです」 僕はそういって、向かいのビルのショーウインドーに飾られている大きなスイカのポスターを指さした。 サマーギフト用に作ったもので、なかなかの自信作だった。 「本当に?」 彼にしては珍しく目をまん丸くしてびっくりしていたので、僕は嬉しくなった。 「ところで何の仕事をしてるんですか?」 僕は調子に乗ってもう一度聞いてみた。 「夜の仕事です」 「本当に?」 「さあどうだろう」 彼はそう言って俯きがちに笑った。 僕たちはまたコーヒーをおかわりした。
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