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結婚二年目はこれまたサプライズだった。
私はてっきりまたレストランに連れて行かれるものだとばかり考えていた。が、その日私が仕事から帰ると仕事のはずの旦那がなぜか家にいて、普段絶対にしないエプロンをしてキッチンに立っていた。
「お……お帰り〜」
旦那の顔は、悪いことをしてそれをお母さんに隠そうとする表情だ。
玄関まで何かが焦げた香りが漂っている。
「どうしたのよこれ。」
何があったのか私は聞いた。
「いや、今日…結婚記念日だからちょっと……サプライズしようと思って…なんていうか料理をね、しようかなーと思って。」
「それであなたが作ったのはこの黒い固まりなの?」
「はい…ハンバーグです。」
「これは?」
「み…ミネストローネ…?」
「なんで作った本人が疑問系なのよ。」
私が指差した、彼の言うところの自称ミネストローネはぐらぐらと煮え立ち、異臭を放ちこの世のものとは思えない色をしていた。
私は少し呆れ気味であったが、旦那は今日のために有給までとって部屋を飾り付けし、料理を振る舞おうとしてくれたのだ。
それを思うと怒ることなど出来ず、2人でテーブルに座り彼の作った自称ミネストローネを啜り、カチカチになったハンバーグを食べた。
味はお世辞にも美味しいとは言えなかったが、そんなこと問題じゃない。気持ちが込もっているのを私は知ってる。ただそれだけで嬉しかった。
そして、今年も旦那は例に習って私にプレゼントをくれた。
「パジャマ?」
そう、旦那が私にくれたのはペアルックのパジャマだった。
「今年は、綿婚式めんこんしきだから。」
旦那曰く、綿婚式はもろくて頼りない綿のような2年目であることからそう呼ばれるらしい。『まだまだ贅沢をしないで、確実に家庭の基盤を作っていこう。』と言うものなんだと話してくれた。
だから今年は、贅沢をせずに手作り料理を振舞ってくれたのかと、私は一人腑に落ちた。
それから二人で後片付けをして、スマホで三年目の結婚記念日について調べようと思ったがやめた。
これは来年の楽しみにしようと思ったからだ。
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