デパートの怪異

2/9
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
俺、海藤悠斗(かいとう はると)は今年、高校を出たばかりの社会人一年生だ。 大卒が9割、ってこの世の中で何で高卒なのかはそのうち話すかも、って今はそれどころじゃない。 「所長、ね。敬意がこもってないと嫌味になるからね」 中へ入りながらの台詞に、俺はわざと返してやった。 「はーい、所長」 就職先は難航するかと思ったけど、担任の先生がツテを当たってくれて何とか決まった。 「生意気なのは、この口かな」 「いひゃいっ、いひゃいっ!!」 俺なんかよりはるかに繊細できれいな指先が頬をむにむにする。 「済みませんでした。黄流(きりゅう)さん」 迷った挙げ句、さん付けを選んだのは正解だったようだ。 「じゃあ、行こうか」 ふわり、とした微笑みは女神もかくや、というレベルに見えた。 俺は続けて中へ入りながら、 (あー、もうっ、これで俺より年上でオトコ、って何の冗談だよっ!!)
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!