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俺、海藤悠斗は今年、高校を出たばかりの社会人一年生だ。
大卒が9割、ってこの世の中で何で高卒なのかはそのうち話すかも、って今はそれどころじゃない。
「所長、ね。敬意がこもってないと嫌味になるからね」
中へ入りながらの台詞に、俺はわざと返してやった。
「はーい、所長」
就職先は難航するかと思ったけど、担任の先生がツテを当たってくれて何とか決まった。
「生意気なのは、この口かな」
「いひゃいっ、いひゃいっ!!」
俺なんかよりはるかに繊細できれいな指先が頬をむにむにする。
「済みませんでした。黄流さん」
迷った挙げ句、さん付けを選んだのは正解だったようだ。
「じゃあ、行こうか」
ふわり、とした微笑みは女神もかくや、というレベルに見えた。
俺は続けて中へ入りながら、
(あー、もうっ、これで俺より年上でオトコ、って何の冗談だよっ!!)
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