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桶狭間にて 後編
―――
「…………」
蘭は目の前の光景に絶句していた。
奇声を上げて相手に向かっていく気迫と、絶え間無く聞こえる甲高い金属音。そしてバタバタと人が倒れる様。その苦悶の表情……
信長の弟の信勝の軍との戦いの時は音だけで実際に戦の様子を見るのは初めてだった蘭は、余りの迫力と残酷さに思わず目を逸らしたくなる。それでも自分の役目を思い出しては、俯きそうになる顔を必死に堪えていた。
「それにしても…ホントにここで戦が起きるなんて……」
別に家康を信じていなかった訳ではなかったが、歴史に名を残す有名な争いを目の当たりにして文字通り一歩も動けない。しかも今回の場合、未来を知っている蘭が教えた奇襲作戦という事で、どうにも変な気持ちだった。
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