桶狭間にて 後編

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――― 家康の言う通り今川の軍は間もなくしてここ、桶狭間にやって来た。耳を澄ましてみるとどうやら何処かの城を落としたとかで義元は機嫌が良く、戦中にも関わらず休息をとるようだった。 その流れはまさしく歴史のテキスト通りで茫然としていると、家康の合図を受けた信長が馬に乗ったまま現れて、あっという間に織田軍と今川軍の戦い。つまり桶狭間の戦いが勃発したのだった。 蘭はその時一瞬信長と目が合ったような気がしたのだが、圧倒的なオーラと凄まじい殺気に怯えている間にその姿は消えていた。 そして何も出来ないまま、今に至る。 「あ!義元だ……」 蘭は群集の向こうに織田軍相手に苦戦している今川義元を見つけた。 「情なんて沸かないと思ってたけど、一年以上も世話になったからやっぱり複雑だな……」 義元を見つめながらそう呟く。しかし頭を振ってその思いを捨てると目を凝らした。 .
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