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「信長だ!義元の方に向かってる!」
その時、信長が馬を降りて義元の方に歩いて向かっているのが見えた。それに気づいた義元が不敵に笑うのがここからでもわかって、背筋が震える。
ハラハラしながら見ていると、信長の命令でその場にいた織田軍は戦うのを止めてその場から離れた。今川軍も信長の威圧感に負けたのか徐々に後退して、結局残ったのは信長と義元。両軍の総大将のみになった。
「これはこれは信長殿。わざわざお越しになるとは。しかし織田信長ともあろうお方が奇襲とは、亡き父上が聞いたらさぞや悲しむでしょうなぁ。」
「こちらとしても勝つ為には手段を選んでいられないんでね。天下統一するにはまず貴方をやらなければ何も始まらない。」
義元の挑発に冷たい声音で答える信長に、流石の義元も顔が引きつって二の句が継げないようだった。
「……っ…そ、そうだ。元康を唆したのも君だな?あいつはわしに忠実だった。それなのに……」
「ふんっ……忠実ねぇ~…あんた、自分の足元だけ見てないでもっと周りを見たらどうだ?このボケ老人が。」
「なんだと!」
「元康。あぁ、家康か。隠れてないで出てこい。」
信長が茂みに向かって呼ぶと、ガサガサと音を立てて家康が出てきた。義元は茫然と家康を見つめている。
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