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隣の家の幼馴染
―――
「ごめんくださーい!」
蘭は家から飛び出して隣の家に駆け込んだ。
表札には『濃田』と書かれている。
「は~い。」
奥の方からパタパタとスリッパの音がし、声の主が玄関のドアを開けた。
背が高くて色白で中性的な顔立ちをした人物が現れる。
「よう!イチ。」
「蘭さま、またですか……」
「悪いな。まったく……心の狭い親父には苦労させられるよ。機械をちょっといじっただけなのにあんなに怒るなんてさ。」
「どうせ壊したんでしょう?はぁ~……お父様に叱られる度にうちに逃げて来られても困りますよ。旦那様もお嬢様も忙しいんですから。」
「蝶子やおやっさんには別に会わなくてもいいんだけど。飯さえご馳走してくれれば。定期的にイチの作る飯が欲しくなるんだよなぁ~」
「相変わらず口だけは上手いですね……」
イチと呼ばれた人物はため息を溢すとドアを大きく開けて蘭を迎え入れた。
『ラッキー!』と呟き舌を出したのを横目で見ていながらも気づかないフリをする。
そんな忠実な家政婦としては花丸満点の対応を見せる、彼なのか彼女なのか定かでないこの人物は一体誰なのか?
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