隣の家の幼馴染

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─── 「なぁ、イチ。」 「何ですか?」 廊下を歩きながら話しかけてくる蘭に顔を向ける。 「次のメンテナンスっていつ?」 「えーっと、三日後ですが。それが?」 「んー?ちょっと聞いただけ。ロボットのメンテナンスなんて大変そうだなって思ってさ。最近は蝶子も携わってんだろ?」 「えぇ。蝶子お嬢様は優秀ですから旦那様の助手が随分板についてきましたよ。わたしも安心して任せられます。」 「そっか。そりゃ良かったな。」 蘭の表情がちょっと優しくなったのを見たイチは密かに微笑んだ。 その表情の変化は人間じゃないとは到底信じられない程スムーズで自然なものだった。歩き方や身のこなしも人との区別が難しく、それが人工知能を搭載した人型ロボットであると見破る事は中々できないだろう。 この家政婦ロボットを発明したのは、イチが先程から旦那様と呼んでいる濃田康三。 日本で一番有名な科学者で工学博士である。ノーベル賞を二回も授賞していて、ロボット開発の第一人者。 そしてこれまでの技術を全部注ぎ込んで完成させたのがこのイチである。 見た目が完璧な人間である以上に感情も少なからず持ち合わせており、接する相手の気持ちに共感する事ができるのがこのイチの特徴。 それに加えて仕事は完璧にこなすという、人間越えの代物だ。その為、月に一度のメンテナンスが欠かせないという訳である。 .
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