"探しもの"は何？

「君はいったい何を探しているんだい？」

『"探しもの"を探しているのさ』

「だからその"探しもの"が何かを僕は聞いているんじゃないか」

『"探しもの"が何かだって？　そんなのはわかりゃしないよ』

「おいおい、何を探しているかもわからずに君は探し続けているのかい？」

『そうだよ。今は、僕が何を探すべきかを探しているところなのさ』

「なるほど、それで『"探しもの"を探している』ということか」

『そういうこと。わかったら邪魔しないでくれ』

「でも普通は"探しもの"が見つかってから探し出すものなんじゃないか？」

『まず探し始めないと何も見つけることはできないだろ？　考えているだけじゃ、"探しもの"を見つけたとは言えないからね』

「まったく君との会話はややこしくて面倒だな」

『その割には楽しんでいるように見受けられるが？』

「君、もしやわざとやっているのかい？」

『さあ、どうだろう。少なくとも僕はこの会話を楽しんでいる節はある』

「そうかい。じゃあ"探しもの"を見つけるまで存分に付き合ってやろうじゃないか」