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プロローグ
「え? 虹?」
月乃は、コンビニを出たところで月の周りをぐるり虹が囲んでいるのを見た。さっきのどしゃ降りの雨の後だからだろうか。
夜でも虹ってできるんだな……
一瞬だけその月虹に気分は上がったけれど、一日の疲労と明日からの仕事のことを考えると、またすぐに気持ちが重くなる。
はあ、誰か代わってくれないかなあ……
そんなことを思っていた時、月乃の車が停めてある方から女性がこちらのコンビニに向かって歩いて来るのが見えた。長い髪を後ろで一つに結んでいる。
近づいて来るに連れ、その顔も少しずつ見え始める。月乃と同じくらいの年齢で、同じように疲れた表情を浮かべていた。
ちょうどその女の人とすれ違おうとした時、急に目の前の空間がトランポリンみたいにしなって、月乃の体はその空間にバンと弾かれ尻もちをついた。
びっくりして前を見ると、同じようにさっきの女の人も弾かれて向こう側に尻もちをついている。
いや、さっきの女の人じゃない。黒髪のボブヘア……あれは私だ!
慌てて自分の髪を触ると、長く伸びていて後ろで一つに結んである。さっきまで目の前にいたはずの女の人と同じ髪型。
「え? えっ?! あなた、私?!」
目の前の自分に言われて、月乃は何と答えていいのかもわからず、ただただ驚いて首を縦に振った。
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