幽霊

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「じいさん、こんなとこで寝たら風邪引くよ。」 「ありがとよ。」孫が生まれたと思ったら光陰矢の如し。あっという間に成人しちまった。 だけどその孫が最近妙な事を言いやがる。「じいさんって幽霊信じてる?」ってさ。俺は南北戦争にも出て仲間も上官もみんな死んでいった。その俺が見ないんだからいないに決まってるって教えてやったのさ。 それでも「うーん、でもなあ、うーん。」って唸りやがる。でもな、そんな俺が最近その幽霊を見ちまったかもしれねえんだ。深夜も深夜、丑三つ時に枕元に死んだ仲間が現れやがって、俺の顔を覗き込むんだ。心配するように眉を八の字にしてさ。何か大声で叫んでるんだが全く聞こえねえの。でも俺はそれを見てるだけ。なんにも出来ねえ。って事が続きざま1週間も続いたんだから信じるしかねぇよな。 そして8日目、いつもの様に何か叫んでる仲間の声が聞こえちまったの。「起きろ、まだくたばるんじゃねえ!頑張れ!」って言ってるのさ。何でか涙がつーっと流れて目を擦ったら急に暗転、戦地の真っ只中で寝転んでたんだ。そんな俺を仲間が覗き込みながら叫んでるんだ「起きろ、まだくたばるんじゃねえ!頑張れ!」って。嬉しいねえ。..... あれからじいさんの霊は見ない。
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