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被害者
午前六時の繁華街。
長い夜の喧騒から明けた街は、ひと時の静寂が支配している。
まばらに歩いている人たちは、夜勤明けの店員か、簡易宿泊施設で一夜を明かした者か、それとも事情があって早く出勤しなければならない労働者か。どちらにしろ数えられる程度の人しか歩いていない。
もう少ししたら、いつものように通勤ラッシュが始まり、駅から大量の人が放出されてくることだろう。できることなら、そうなる前に現場から撤収を図りたいものだ。
布施晴海は規制のために張られた立入り禁止テープを跨いで中に入っていった。
目の合った新米の制服警官が姿勢を正して敬礼してきた。晴海は軽く返礼をしながら「ご苦労様」と声をかけてその前を通りすぎた。
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