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第一章 長谷川健司
ある朝、惰眠を終えた私はじりじりと鳴る目覚まし時計を止めいつものようにおおきなあくびをし、ゆっくりとベッドから這い出た。私の部屋はどこにでもあるワンルームである。
キッチンへ行きフライパンに火をつけそこへ生卵をパかあと割ったらその瞬間勢いのいいじゅうーと聞こえてきた。そこへ水を少し入れ蒸らすのだが私は今日見た夢を自然と思い出していた。
とても懐かしい夢だ。
命日には必ずこの夢を見る、もうそろそろあの季節か……。またあの場所に亮と行かなければ。あれは高校時代、中川玲子……。
その名前を聞いてまず思い出すのは長いきれいな黒髪に真っ白な肌、頬は赤く染まり、可愛らしく白い歯を見せて笑い、運動神経は抜群
人当たりもよくクラスの人気者……。彼女を知る人物ならそう思うだろう。あんな可愛いこと付き合いたい……。当時の私はそう思っていた。もっと奥まで自分の想像をのぞいてみる。そうだ……。彼女は死んだのだ……。
彼女のお父さんが大学教授であり、彼女の死には不可解な点が多くあったことから当時彼女の死はマスコミで大きく取り上げられた。
ぱんっ!!
その音ではっとした
部屋には焦げ臭いにおいが立ち込め、気づけば目の前の目玉焼きは真っ黒だった。最悪だ。
まあそんな日もあるかと気持ちを切り替えた。
「さあ、仕事でもするか……。」
ボソッとそう言ってパソコンへと向かう。
私の仕事は探偵だ。なんて堂々と言ってはいるが社長と私だけの小さな探偵事務所で今依頼されている案件のようにマンネリ化した夫婦の奥さんから
「旦那が浮気していないか調べてほしい」などの浮気調査や
婚活パーティーで出会ったはいいが、経歴や仕事を偽ってないかなどの素性調査などをしているしがない探偵である。
特別な仕事をするわけでもなければどこかのドラマのように次から次へと事件を解決するわけでもない……。
探偵になった理由は大学時代に探偵のバイトをしていたからである
人の嫌なところを見るこんな仕事だが、比較的気に入ってはいる。
パソコンを起動させメールを打つ
「鈴木探偵事務所の長谷川です。○○様から引き受けた浮気調査の件についてご報告させていただきます。昨晩旦那様は8時に会社を出られ、その足で浮気相手とみられる女性と待ち合わせをした後、8時40分頃旦那さんと彼女は一緒にホテルへと入っていかれました。10時30分頃お二人はホテルからでてきました。」
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