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わたしはキッチンに行きたくない理由とわたしが求める温もりのある場所を思い出した。
大型の冷蔵庫。
ゆっくりと扉をあける。
そこに探し物はあった。
大事なものはいつもここに隠している。
そう、大切な、大切なあなたを。
わたしはここにしまっておくことで、寂しさから逃れられると思ったのだった。
ぐるぐるにラップで包んだあなたが青白い顔をして眠っている。
わたしはこんなこともうまくできない。
鼻が少し右に曲がってしまっている。
あなたならきっともっときれいに包むのだろう。
わたしはあなたを抱きかかえる。
お願い、またわたしを暖めて。
でもあなたは冷たい。
どうしたらあの温もりがもどるのだろう。
そうだ。
電子レンジ。
電子レンジで暖めよう。
わたしはあなたの頭部を大事に抱え、電子レンジのふたを開ける。
でもどうしても入らない。
わたしはほとほとに困ってしまった。
わからないこはなんでもあなたに聞いていた。
わたしはきっと選択をあやまったのだろう。
なにもわからないわたしが導き出した最適解。
それは何の役にも立たないのだ。
電子レンジに入りさえすれば、最適のあたため時間を勝手に選んでくれる。
何か物音が聞こえる。
玄関のほうが騒がしい。
男の人の声が聞こえる。
鍵をかけていたはずなのにどうやって鍵を開けたのだろう。
わたしには何もわからない。
わたしはどうすることもできず、ただあなたにしがみついた。
あなただけは誰にも渡したくない。
ただその一心で、わたしはあなたを冷蔵庫に隠すことに決めたのだった。
それがわたしの最適解。
真っ赤に染まって鼻白む。
炎は消えた。
もう燃やすものは、何も無い。
おわり
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