2,宝石はそこにない

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 教室に着くと、流はまだ来ていないようだった。  正直少しほっとしながら、席に着くと、すぐに、隣に横田くんが座った。 「おはよう」 「あ、うん、おはよ」  駅で見たことは何もなかったかのように、普通の態度だった。もしかしたら聞こえてなかったのかもしれない。とにかく、今は横田くんが話しかけてこないことがありがたかった。  ホームルームが終わり、教室を出て行った担任教師と入れ替わるように流が登校してきた。流の友達、翔平も一緒だった。 「えー流たち、遅刻ー?」 「寝坊?」  加奈やクラスのみんなが次々声をかける。 「別にー。ちょっとだるかっただけ」  いつも通りの流の声が聞こえた。 「ノア、一時間目世界史だよー。教室移動しよ」  加奈に話しかけられてはっとする。 「そうだったね、行こうか」  急いで教科書とノートを用意している間、加奈は流と翔平にも声をかけに行った。 「あー俺らはいいや、先行ってて」  翔平が苦笑いで加奈の誘いを断った。 「先? 何で? いつも四人で行くじゃん」  困惑した顔の加奈が流を見るが、流は無視している。おそらく、流は翔平に、私と別れたことを話したんだろう。いずれは加奈も知ることになる。その日から私はクラスで孤立することになるんだ。
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