2,宝石はそこにない

12/12
前へ
/34ページ
次へ
「先、行ってるね」  流と翔平にそれだけ言って、三人を追い越す。 「あ、待ってよノア」  加奈は追いかけてきてくれた。少しだけほっとする。でもそれも今日までかもしれない。 「加奈は私とどうして友達やってくれてるの?」 「え、何それー」  加奈は鼻白んだ声を出した。 「ごめん、変なこと聞いて」 「ノア、今日流と話してないよね、何かあった?」 「……実は別れたんだ」 「うええ!」  変な声で加奈は叫んだ。 「声大きいって」 「そっかー別れたかー。確かに、ノアたち合ってない感じしてた」  その言葉にぎょっとした。はたからもそう見えてたんだと、今さら気がつく。 「合ってないか、確かにね。だからさ、なんというか。もう私といる意味ないよ」  我ながら、ネガティブなセリフだと思った。 「だから、なにそれ」  加奈はげんなりした顔をする。 「私がノアといるの、別に流がどうとかは関係ないから」 「そうなの?」 「だって別に流と付き合う前から私たち一緒じゃん。グループ内で付き合いはじめて、めんどくさいなって思ったくらいだし」  そうだ。まず加奈と仲良くなって、それから加奈と同じ中学だった流たちとすごすようになったんだ。 「てか、ノアが私達に無理に合わせてるのくらい、分かってたよ?」 「え」  私は思わず言葉に詰まった。 「もっと普通にしてていいのになーって思ってた。どうせバレてるよ」  どう言っていいのか分からず黙り込んでしまう。 「ま、流といなくても、ウソの姿見せられてても、もう友達だから別に見捨てたりはしないよ」  冷たいのか優しいのか分からない加奈の言葉。だけど今の私にはすごく響いて胸のあたりが詰まった。 「ちょっと、何泣いてんの!? 私そんなひどいこと言った?」 「違う……ごめん」  流と別れたら、みんな私から離れていくってこわかった。それだけ周りの人を信頼していなくて、見下していたってことなのかもしれない。  私だけが一人芝居で、『人気者の彼女で、ちょっとおとなしめだけどクラス上位の女子高生』を演じていたんだ。  恥ずかしくて、情けなくて、加奈の真っすぐなところがうらやましくて、なぜか泣けてきた。 「ちょっとやめてよー」 「ありがとう、加奈」  加奈は照れているのを隠すように、大げさにため息をついた。 「まぁ、これからは私にも本当のノアを少しずつ見せてよね。全部じゃなくたっていいから」  私は加奈の腕をぎゅっと抱きしめた。それが今できる精一杯だった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加