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「先、行ってるね」
流と翔平にそれだけ言って、三人を追い越す。
「あ、待ってよノア」
加奈は追いかけてきてくれた。少しだけほっとする。でもそれも今日までかもしれない。
「加奈は私とどうして友達やってくれてるの?」
「え、何それー」
加奈は鼻白んだ声を出した。
「ごめん、変なこと聞いて」
「ノア、今日流と話してないよね、何かあった?」
「……実は別れたんだ」
「うええ!」
変な声で加奈は叫んだ。
「声大きいって」
「そっかー別れたかー。確かに、ノアたち合ってない感じしてた」
その言葉にぎょっとした。はたからもそう見えてたんだと、今さら気がつく。
「合ってないか、確かにね。だからさ、なんというか。もう私といる意味ないよ」
我ながら、ネガティブなセリフだと思った。
「だから、なにそれ」
加奈はげんなりした顔をする。
「私がノアといるの、別に流がどうとかは関係ないから」
「そうなの?」
「だって別に流と付き合う前から私たち一緒じゃん。グループ内で付き合いはじめて、めんどくさいなって思ったくらいだし」
そうだ。まず加奈と仲良くなって、それから加奈と同じ中学だった流たちとすごすようになったんだ。
「てか、ノアが私達に無理に合わせてるのくらい、分かってたよ?」
「え」
私は思わず言葉に詰まった。
「もっと普通にしてていいのになーって思ってた。どうせバレてるよ」
どう言っていいのか分からず黙り込んでしまう。
「ま、流といなくても、ウソの姿見せられてても、もう友達だから別に見捨てたりはしないよ」
冷たいのか優しいのか分からない加奈の言葉。だけど今の私にはすごく響いて胸のあたりが詰まった。
「ちょっと、何泣いてんの!? 私そんなひどいこと言った?」
「違う……ごめん」
流と別れたら、みんな私から離れていくってこわかった。それだけ周りの人を信頼していなくて、見下していたってことなのかもしれない。
私だけが一人芝居で、『人気者の彼女で、ちょっとおとなしめだけどクラス上位の女子高生』を演じていたんだ。
恥ずかしくて、情けなくて、加奈の真っすぐなところがうらやましくて、なぜか泣けてきた。
「ちょっとやめてよー」
「ありがとう、加奈」
加奈は照れているのを隠すように、大げさにため息をついた。
「まぁ、これからは私にも本当のノアを少しずつ見せてよね。全部じゃなくたっていいから」
私は加奈の腕をぎゅっと抱きしめた。それが今できる精一杯だった。
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