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放課後のカフェは同じ学校の生徒たちで込み合っていた。みんなここで勉強するのがちょっとしたお楽しみなのだ。並んで勉強していると、流がもたれかかってくる。
「どうしたの?」
「んーやる気出ない」
付き合って最初のころは、こういうやり取りも可愛いと思っていた。だけど今は、ただただうんざりするだけだった。
「やりなよ、また補講になるよ。来年は受験もあるんだし」
「ノアは真面目ちゃんだからなー」
「……普通にやってるだけだって」
「ノアは授業もさぼんないじゃん? この前だって、俺らは服買いに行ったのに付いて来なかったし」
「服なんて、いつでも買えるでしょ? ネットでもいいし」
「いやいや違うんだって! ブランドコラボの限定品が出る日だったんだよ」
「限定品かぁ……」
「なんかさぁ、ノリ悪いよな」
流の機嫌が悪い気がして、とりあえず謝っておくことにした。
「ごめんって、私はそういうのあんま興味なくって」
「もうちょっとおしゃれしてほしいなぁ、俺の彼女なんだから」
流にそう言われると、とたんに自分の立場を思い知る。
私は流に、たまたま選んでもらったから、少し価値があるだけで、実際の私にはなんにも価値はない。そんな私に、流だってうんざりしているのだ。私が流にうんざりするより、ずっと。
「うん……ごめんね」
「じゃあ次は行こうな!」
「わかった、じゃあ流も今日は勉強がんばろうよ」
「わかったー」
そう言いながらも、流は私の肩に持たれかかったままだった。
「ねぇ」
顔をのぞき込むと、急に頭を押さえられてキスされた。
「こういうこと外でしないでよ」
「じゃあ学校でする?」
にやにやする流にため息をついた。
頭の中で、扇がひらりと舞った。その影からきらりと光るものが表れて、それは自信に満ちあふれた強い目だった。
「なんで今出て来るの……」
つぶやいた言葉は、流にもう一度キスされて飲み込んだ。
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