2,宝石はそこにない

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「えー! ノアと大輝隣の席なのー! 何この私得な席順!!」  次の日の昼休み、クラスに来た弘果は大きな声で笑った。  弘果は私と幼なじみであり、横田くんとダンス部同期でもある。世界史の教科書を忘れたらしく、私か横田くんに借りに来たらしい。あいにく横田くんは日本史専攻だったので、私の教科書を貸すことになった。 「なんだよ、私得って」  横田くんも笑う。 「いやー、一度で二度おいしいというか、まぁ一度で用事がふたつ済むというかさ!」 「それあれだろ、キャラメルかなんかの」 「それは一粒で二度おいしいでしょ。古いのによく知ってんね大輝」 「母さんが好きなやつ」 「うちもー! 親の味覚一緒かい」  弘果と横田くんはポンポン会話していく。 「で、ノアは?」 「え、知らない……」  シンとなる二人を見て、はっとする。  どうして私ってこうなんだろう、ノリ悪くて、会話のテンポについていけなくて……。  取りなすように弘果が言った。 「ノアはこうみえて人見知りの子だから、大輝よろしくね」  ぽんっと弘果が頭をなでる。 「や、やだな弘果。もう私そんなんじゃないって」  確かに中学のときは人見知りで引っ込み思案だった。でも今は違う。  クラスでも上位カーストの流の彼女で、グループ内ではちょっと大人しめで抜けてるところもある方だけど、まぁまぁノリもいい子、ってことになってるんだから……。  特に、横田くんにはそんな昔の自分を知られたくなかった。 「分かってるよ」  私が頭でぐるぐる言い訳していると、横田くんはぽつりと言った。 「え? 何を?」  思わず聞き返す。 「ん? 真北さんが人見知りってこと。分かってるから大丈夫」  どうして、分かるの。全然話したことなんてないのに。ずっと必死に隠してきたことをばれてるって言われて、恥ずかしくて仕方なかった。 「俺、怖くないよー」  横田くんは、私の顔をのぞきこんだ。 「わ、分かったから」 「そ? ならよかった」 「いやいや、大輝はこわいよー。超ドSだから!」  弘果がちゃかした。 「それは部員にだけだろ! 他の子には優しいの!」 「お手柔らかに……お願いします」  やっとのことで一言言うと、横田くんは「ははっ。お手柔らか? にしとく」と笑ってくれた。  
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