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「えー! ノアと大輝隣の席なのー! 何この私得な席順!!」
次の日の昼休み、クラスに来た弘果は大きな声で笑った。
弘果は私と幼なじみであり、横田くんとダンス部同期でもある。世界史の教科書を忘れたらしく、私か横田くんに借りに来たらしい。あいにく横田くんは日本史専攻だったので、私の教科書を貸すことになった。
「なんだよ、私得って」
横田くんも笑う。
「いやー、一度で二度おいしいというか、まぁ一度で用事がふたつ済むというかさ!」
「それあれだろ、キャラメルかなんかの」
「それは一粒で二度おいしいでしょ。古いのによく知ってんね大輝」
「母さんが好きなやつ」
「うちもー! 親の味覚一緒かい」
弘果と横田くんはポンポン会話していく。
「で、ノアは?」
「え、知らない……」
シンとなる二人を見て、はっとする。
どうして私ってこうなんだろう、ノリ悪くて、会話のテンポについていけなくて……。
取りなすように弘果が言った。
「ノアはこうみえて人見知りの子だから、大輝よろしくね」
ぽんっと弘果が頭をなでる。
「や、やだな弘果。もう私そんなんじゃないって」
確かに中学のときは人見知りで引っ込み思案だった。でも今は違う。
クラスでも上位カーストの流の彼女で、グループ内ではちょっと大人しめで抜けてるところもある方だけど、まぁまぁノリもいい子、ってことになってるんだから……。
特に、横田くんにはそんな昔の自分を知られたくなかった。
「分かってるよ」
私が頭でぐるぐる言い訳していると、横田くんはぽつりと言った。
「え? 何を?」
思わず聞き返す。
「ん? 真北さんが人見知りってこと。分かってるから大丈夫」
どうして、分かるの。全然話したことなんてないのに。ずっと必死に隠してきたことをばれてるって言われて、恥ずかしくて仕方なかった。
「俺、怖くないよー」
横田くんは、私の顔をのぞきこんだ。
「わ、分かったから」
「そ? ならよかった」
「いやいや、大輝はこわいよー。超ドSだから!」
弘果がちゃかした。
「それは部員にだけだろ! 他の子には優しいの!」
「お手柔らかに……お願いします」
やっとのことで一言言うと、横田くんは「ははっ。お手柔らか? にしとく」と笑ってくれた。
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