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「あ、真北って勉強苦手?」
数日後の英語の時間。にやりと笑った横田くんは、返却されたばかりの英単語の小テストを指さした。
英語は嫌いじゃないけど、単語を覚えるのはどうも苦手で、今回も15点満点で5点というありさまだった。
「見ないでよ!」
思わず点数を手で隠す。こんなとこ知られるなんて、最悪。席が隣だといいことだけじゃないんだ。いや、横田くんの隣だからって、いいって思ってるわけじゃないけど。
「今さら隠しても、もう見たし」
はぁ、とわざとらしいため息をついて横田くんは言った。目がにやついている。
「……そういう横田くんは?」
「俺? 見る?」
ちらりと見せられたテストは、満点の15点だった。
「なんかずるい! 満点だから突っかかってきたんでしょ? そもそも英単語得意なんでしょ? そうでしょ?」
「へぇ、真北ってそうやって焦ることあるんだ。意外。おっとり系かと思ってた」
「意外って」
私だって、横田くんのことやさしい系だと思ってた。そう言おうとしてやめた。
「何? 案外俺Sだった?」
ふっと笑われて、頭の中が覗かれていたみたいで顔が熱くなった。
「次はもっと頑張ってくださいねー」
赤面を違う意味でとらえてくれたらしく、横田くんは笑った。
ちょうどテスト返却が終わり、先生が教科書を読みはじめると、教室がしんと静まった。
「ねぇ」
しばらくして、私は横田くんにひそひそ声で話しかける。
「何?」
横田くんは、少し身体をこっちに傾けて、やはりひそひそ声で答えた。
「あのね、次の小テスト勝負しない?」
「は? 無謀だね」
「私だって本気出せば」
「OK」
横田くんはそう言って、身体を真っすぐに戻した。
「負けないけど」
横田くんはひとり言のようにつぶやく。
「私だって」
二人でふっと笑った。こういう何気ないやり取りが、なんだかものすごく楽しかった。
私って悪いことをしているのかな、とちらりと頭をよぎる。流の方を見ると、けだるそうに机につっぷしていた。
ただクラスメイトと勉強のことを話しているだけ、と自分に言い聞かせた。
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