プロローグ

1/1
前へ
/34ページ
次へ

プロローグ

 あの人が手に持った扇をずらして、隠していた顔があらわになる。  扇からのぞくのは、強い光をきらきらと宿した目。  その目はまっすぐ何かを見ていた。  体操服を着ているのに、私と同じ高校生には思えなくて。  どこかの王のように堂々と、いつかの王女のように優美に見えた。  ひらひら舞うその人に、いつしか私は惹かれていく。  その目に見つめられたくて、たまらなくなる。  そのくせ、その目に真正面から射られると全部を見透かされそうで、私はそっと目を逸らす。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加