雨が止むまで

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殴られるのも、蹴られるのも、好きではなかった。当たり前だ。人間なんだから、動物なんだから、痛いのは嫌だ。怒られる度に一応反省はするのに、何度も同じ事をやってしまった。 寝るまでには至らなくても、杏介以外の相手と一緒に出掛けたり、飲みに行ったりしたその後に、友達以上の関係を持ってしまった。 別にそれは、モテていたワケではなかった。 もし相手にそれほど魅力を感じなくても、俺は意思が弱く、押されると断れないところがあった。流されるままに自分を押し殺してしまう事もある。 恋愛的な意味を抜きにしても、一人でも多くの人から、好意的に思ってもらいたいから。どんな関係性であれ、自分と接してくれる相手は、嫌な気持ちにさせたくない。それは自然な事だと思う。その流れで、そうなってしまっただけなのだ。 杏介の基準からすればそんな俺が悪い。当然だ。そう分かっていたから、止めさせなかった。やり返そうとも思わなかった。 気が済むまで暴力を振るって、それで許してくれるなら、別れずにいられるならそれで良かった。 優しい彼がイライラして、腹を立てているのは俺のせいなのだ。俺が分別のない、自分で考えると間違った行動に出てしまうくせに、それを止められない馬鹿だから。 もちろん普通の関係でない事は分かっていた。家庭内、配偶者間暴力というDV被害のニュースもよくやっていた。 でも、配偶者でもないし、自分に限ってそんなはずがない。むしろ、どちらかと言えばこんな俺と付き合っている杏介の方が被害者だろう、と思っていた。
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