雨が止むまで

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雨が止むまで

特にする事もないまま、夜中まで起きていた。 眠れなかった、と言ったほうが正しいかも知れない。梅雨入りしたばかりの時期で、雨の中どこへ行く気にもなれず、休みの日でも一日中家にいた。体力と時間を、持てあましていたのだ。低気圧のせいか、昔ひびが入った肋骨が少しだけ痛かった。 テレビを観ても似たりよったりの深夜バラエティーばかりで、仕方なく、ザッピング中に見つけた古い映画を観ていた。何十年と昔の、ゴールデンタイムに流しても視聴率の取れなさそうな内容の洋画だ。 電気も点けず、暗い部屋の方が、暗いシーンがよく見えた。窓の外には雨の音と、たまに車がマンションの前の道路を走り抜ける音が聞こえていた。 飲んでいた缶ビールが空になり、冷蔵庫に行こうと立ち上がった。コマーシャルまで待てなかった。 その時、インターホンが鳴った。 暗い部屋で、自分以外に誰もいない中に突然響くような音。心臓が止まるかと思ったし、怖かった。常識的に考えて、他人を訪ねてくる時間ではないからだ。全身が熱くなり、呼吸が早くなる。すぐには対応できなかった。 隣の人が苦情を入れに来るほどではないはずだが、ひとまずゆっくり屈んで、リモコンでテレビの音量を下げた。雨の音が大きくなる。 もし騒音の苦情なら手遅れなのに、息を殺して、就寝中を装う。玄関の方を見る。 また、インターホンが鳴った。 酔っ払って帰ってきた、同じ階の住人が部屋を間違えているのかも知れない。あるいは頭がおかしい人かも知れない。もしかしたらずっと昔に、この部屋に住んでいた人を殺した犯罪者で、また襲いに来たのかも知れない。
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