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「ごめんなさい」
「それはさっき聞いた」
「すみません」
「言い方変えただけだね、それじゃ。俺が訊いてるのはそういうことじゃないよね」
「じゃあ、なんて言えばいい?」
「俺にそれを訊く?」
ダメだ。彼女はその可愛い顔の下に隠し持っているザ・頑固を全開にしている。こうなってはアメもムチも利かない。どうしたものか。自然とため息がこぼれた。なんだって今日なんだ。
仕事が重なって最近なかなか彼女との時間が取れなかった。でもこれは、今始まったことじゃないから理由にはならない。嫌ならもうとっくに二人は終わっていた。それとも、ずっと我慢していたんだろうか。本当は寂しがり屋の彼女だから。
「俺なりに大事にしてるつもりだけど」
「わかってる。それは、本当に。大事にしてもらってるなって。すごく」
「じゃあ、なんで?」
目を向けると目をそらす彼女。なんでそこで黙るかな。
会えない間、彼女の行動を束縛するようなことをしたつもりもない。彼女は一人での時間の過ごし方を知っているし、友人もたくさんいる。
「じゃあ、なんで?」
やっぱりどうあっても、話はそこへ戻ってしまう。
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