別れ話をしよう。

3/9
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ごめんなさい」 「それはさっき聞いた」 「すみません」 「言い方変えただけだね、それじゃ。俺が訊いてるのはそういうことじゃないよね」 「じゃあ、なんて言えばいい?」 「俺にそれを訊く?」 ダメだ。彼女はその可愛い顔の下に隠し持っているザ・頑固を全開にしている。こうなってはアメもムチも利かない。どうしたものか。自然とため息がこぼれた。なんだって今日なんだ。 仕事が重なって最近なかなか彼女との時間が取れなかった。でもこれは、今始まったことじゃないから理由にはならない。嫌ならもうとっくに二人は終わっていた。それとも、ずっと我慢していたんだろうか。本当は寂しがり屋の彼女だから。 「俺なりに大事にしてるつもりだけど」 「わかってる。それは、本当に。大事にしてもらってるなって。すごく」 「じゃあ、なんで?」 目を向けると目をそらす彼女。なんでそこで黙るかな。 会えない間、彼女の行動を束縛するようなことをしたつもりもない。彼女は一人での時間の過ごし方を知っているし、友人もたくさんいる。 「じゃあ、なんで?」 やっぱりどうあっても、話はそこへ戻ってしまう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!