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「ごめん。なんて言っていいのかわからない」
「いいの。大丈夫だから」
「でも、それを理由に別れるつもりなんてないから」
「その言葉だけで充分」
「いや、俺、別れないって言ってるんだけど」
「うん、わかってる。だから、その気持ちだけで充分」
「いやいや、わかってない」
なんで。どうしてこう、いつも彼女は。
「これはわたしの問題だから、池本さんを巻き込みたくないの」
「なんで?」
「なんでって…」
だからなんでそこで不思議そうな目をするかな。
「俺も今日は大事な話があるんだ」
突然切り出したその言葉に、彼女が身を固くしたのが見えた。ああ、なんでよりにもよってこのタイミング。自分で自分を呪いたくなる。だけど、それよりも優先すべき行動が男にはあるわけで。
「結婚しよう。」
だから。なんでそこで黙るかな。本気で驚いたって目をするかな。
「なんで…」
その言葉を口にするのは今度は彼女の番だった。
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