9人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんでって、なんでそう思うの?」
「だって」
「あーやっぱり言わなくていいや。だいたいわかるから。先に言っておくけど俺は、同情でも責任感でも義務感とかでも何でもないから。もし反論するならそれ以外にして」
と、ここまで言っているのにまだ考え込む彼女。おいおいとツッコミたくなる。
「俺ってそんないい加減に見える?」
「そうじゃなくて」
「言ったよね、俺なりに大事に思ってるって」
「うん、それは充分。身に染みるほどに」
「身に…そこはわかってるのに、なんでわからないのかな。やっぱりもっと早く言っておけばよかった。今、このタイミングで言っても絶対信じてもらえないもん」
「そんなことない。わたし、池本さんはすごく誠実な人だと思うし、いい加減な気持ちでそういうこと言える人じゃないってわかってるし」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「じゃあ、返事は?」
「え?」
「返事」
「返事?」
「そう。結婚しよう」
だから。なんでそこで流されてくれないかな。この会話の流れで「はい」と言ってくれれば万事解決するんだけど。
潤んだ目でじっと見つめてくる彼女。本当にわかってる?
最初のコメントを投稿しよう!