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優一は、後藤夫人がテレビに釘付けになってくれれば、本人に気付かれることなく仔細にわたって観察を深めることが出来るだろうと考えて、心のなかでほくそ笑んだ。
後藤夫人、どうぞ好きなだけ番組を観て下さい。
俺も自分が好きなものを存分に見せて貰いますからね。
ふふふふ…。
「あ、またこの人出てるわね。ご主人はこういう人のことをどう思いますか?」
後藤夫人が、不意に優一に質問を投げ掛けた。優一はちっともテレビを観ていなかったので、夫人が出演者のうちの誰について意見を求めているのかが分からなかった。
「すみません。どの人のことを仰っているのですか?」
「右端に座っているストライプのシャツを着た彼女です」
「ああ。…まあ、綺麗なお嬢さんだと思いますよ」
「なるほど。…ご主人は彼女のことをご存知ないのですね」
「ええ、知りません。あまりテレビを観ないものですから、名前はおろか、この方が歌手なのかモデルなのか、なにも分からないのですよ」
「彼女は主にケーブルテレビの深夜番組に出演しているタレントですわ。最近はこうして民放の番組にもちょくちょく出るようになって来ましたけどね。実は彼女には別に本業がありますのよ」
「へえ。どんな仕事ですか?」
「なんだと思います?」
「さあ…。学校の先生か何かでしょうか?」
「いいえ。彼女はAV女優なのです」
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