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後藤夫人の口から「AV女優」という言葉を聞くなり、優一はとっさに足を組んで、活動を始めようとした愛息を取り押さえた。
「つまり後藤さんは、私がAV女優という職業についてどう思っているのかということをお聞きになりたいのですか?」「ええ、そうです」
優一は考えた。
愛子はいま、俺がこのAV女優を忌み嫌うような発言をすることを望んでいるのだろうな。
温室育ちで保守的な愛子のことだ。
生まれてこのかたアダルトビデオを観たことなんかないだろうし、なにかおぞましいものだと思っているに違いない。
しかし、いま優一は愛子の期待に添うつもりはなかった。
それよりも、後藤夫人から人間として…いや、男として関心を持たれることを強く望んでいたのだ。
優一はいくつかの返答を頭に浮かべて、そのなかから後藤夫人が期待していそうなものを選んで自分の答えにした。
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