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黒樹は、椅子の背に寄りかかってぼんやりと室内を眺めた。
常々思っていることがあった。自分はガラクタで、ハリボテで、姿形があるだけで、ニセモノの存在だ、と。人であるならあるはずの、体の真ん中に居座る厄介な代物が、自分には、見つからない。
探しても、探しても――――――――。
黒樹は、ちらりと楓を見た。
床で揺れている天井からのカラフルな光を、楽しげに見つめている。
「(楓は、その真ん中に入っているモノが具現化したような奴だ)」
「なに?」
何も言っていないのに、楓が黒樹を振り返った。
「楓は賑やかだって思っただけ」
はぐらかす黒樹に、楓は、得意げに笑いかけた。
「俺さぁ、黒樹の探しもの、見つけられるかも」
「…………へぇ。それはめでたいね」
心臓が跳ねたことは隠して、黒樹は、関心なさげに答えた。
「あ、信じてないだろ?!」
「信じてる、信じてる」
「感情こもってなーい!」
この国には、「闇」がある。手にするとなんでも願いが叶うのだという、不思議な力が――――――――。
「捜し物承ります。ーさがしものー」:END
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