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「最初に言っとくけどさ」
人気のない校舎の階段に座った涼が口を開く。
踊り場の窓から夕日が差し込み、私と彼の影を伸ばしていた。
「俺がマルを好きになることはないから」
スマホを見たままそう言う涼に、私は笑って答える。
「それはわかってるよ、涼が好きなのはユリって聞いてるし私も涼を好きになることはないよ」
廊下にある自動販売機でコーラとカフェオレを買い、コーラの方を涼に手渡して私は彼の一段下に座る。
「せんきゅ、まぁそうだよな」
と、涼も笑う。
***
この時はまだ、本当にただの友達だった。
本当に涼を好きになるなんて、1ミリも思っていなかった。
異性の親友という立場は、きっと誰よりも近く、誰よりも遠い距離にある。
誰かを本気で好きになり、その誰かが自分ではない誰かを本気で好きでいるのを、何もできずに見ているというのは凄く凄くつらいということを、私は彼に恋をして初めて知った。
***
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