一番近くて遠い恋

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涼と私は大学に入ってから知り合った。同じバンドサークルに所属しており、涼はドラム、私はキーボードを担当している。話に出てきたユリはボーカル兼ギターで、とにかく可愛くて歌もギターも上手い。いつもひらひらしたスカートを身につけ、ふわふわとカールした髪を揺らして透き通るような声で歌う彼女は、同性の私から見ても「この子はモテるだろうな」という印象だった。 対する私は平凡を絵に描いたような人間だ。 すごく不細工なわけではないが、可愛くもない。キーボードもとても上手いわけでもない。歌はむしろ下手な部類だ。 服装はいつもパンツで、髪は無造作にまとめただけのポニーテール。髪型に凝る時間があるなら寝たい、と思っている。そういうところがダメなんだろうけど。 マル、という渾名は苗字の丸山から来ている。なんだか太っている人みたいであまり気に入らないが、小学生の頃からこの渾名なので今更文句を言う気もない。 涼はドラムがめちゃくちゃ上手い。どんな曲でもサラッと難なく叩いてみせるので、最初は女子達に人気だった。 しかし、彼は露骨にユリとそれ以外の女子とで反応が違った。 他の女子を冷たくあしらうとかそういうわけではないが、ユリの前では挙動不審になる彼に、女子達は早々に察して離れていった。他人の恋愛を外から観察している方が面白いのであろう。 かく言う私もそのうちの1人だった。はずだった。 ***
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