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回想
私は長い間、世界を旅していた。いつから旅を始めたが分からないくらいに。
そして、この国が最後になるのだろうなとなんとなく感じていた。
私はこの国を浮浪していた。
前はかなり北のほうの棚田のきれいな田舎に居たと思ったら、人間のたくさんいる、夜になっても明かりが消えない場所にいた。
そして今はどこか懐かしげの感じるきれいな海のある田舎にいた。少し先には少し大きい島があった。恐らく一時間も歩いたら、島を全て見ることができる。
私はなんとなくその島に向かった。
島には幾つかの家があった。それらはとても古びていた。中にはもう壊れかかっているものある。
私は壊れかかっている家の一つに入ってみた。
壊れかかっている家なだけあって、中には簡単に入れた。当然、壊れかかっているのだから、中もさぞかし荒れているのだろうと思っていたが、意外というか、普通に暮らせるくらいにはきれいだった。
家具と言えるほどの立派で大きいものはなかったが、折り畳み式の椅子と簡易式の机が置いてあった。
誰かの秘密基地だろうか。そういえば、昔、それは正確に何年前だったかは覚えていないが、秘密基地を作って友達と遊んでいた覚えがある。家からお菓子やおもちゃを持ってきて、夜遅くまで遊んだり、ラジオを聴きながら、うたたねをしていた。
私はそのなつかしさに浸りながら、その椅子に深く腰かけてみる。
高く上っている太陽の日差しが隙間から流れ、海の声が控えめに流れている。
しばらく私は物思いにふけた。
日差しもかなり西になり、部屋が薄暗くなっていた。いつの間にか私は眠ってしまっていたらしい。私はおいたまにすることにした。
家から出ると少ずつ沈む太陽が二つ見えた。
またさっきよりも人間が増えているように見えた。仕事から帰ってきたのだろうか。しかし、そういう風には見えなかった。彼らはこの住宅の並ぶ場所とは異なる方向に歩いている。私はその集団についていくことにした。
島の中心部に向かう道を歩く。少しずつ家が少なくなり、波の音も聞こえなくなっていた。
細い道の先には大きな広場があった。そこは人間が切り開いたという雰囲気はなく、自然に、もともとから存在しているという雰囲気があった。そのためかこの場所には神聖な雰囲気があった。
そこで人々は久しぶりに会う人と話すように相手との距離感を確認するように話していたり、小さい子は走って遊んでいたりしていた。そして中心のところでは何人かが踊っていた。
私はそれが終わるのを見届けると、帰るべき場所へ向かった。
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