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「ありがとうございます。では、私が戻ってくるまでは扉に鍵をかけ、誰が来ても決して開けないように」
周りは獣の巣窟であることをお忘れなきよう。
冗談めかしてそう言うと、サラは部屋を出て行く。
扉が閉まると、アウロラは慌てて鍵をかけ、そのままそこに座り込んだ。
*
それから、どれくらいの時が経っただろうか。
扉の叩かれる振動で、アウロラは目を覚ます。
どうやら扉にもたれかかり、そのまま眠ってしまったようだ。
慌てて立ち上がり解錠しようとして、はたとアウロラは思いとどまる。
周りは獣の巣窟だという、別れ際のサラの言葉を思い出したからだ。
どうしたものかと思案していると、今度は扉を叩く音と同時に声が聞こえてきた。
「巫女殿、私です。大丈夫、開けてください」
聞き間違えようもないサラの声に、アウロラは震える手で解錠し扉を開く。
「お客人達、いい感じにできあがっています。今なら無礼講でしょう」
サラは、万一何か粗相があっても大丈夫な頃合いを見計らってくれたのだ。
アウロラが謝意を表そうとするよりも早く、サラはその手を取り足早に歩き始めた。
「実は、配下に命じてノクト様へ使いは出してあります。事後承諾になりますが、この際仕方ないでしょう」
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