12人が本棚に入れています
本棚に追加
にっこりと笑ってみせるサラだが、アウロラの表情はどこか沈んでいる。
不審に思い首をかしげるサラに、アウロラは目を伏せる。
「どうして、サラ様はわたくしに優しくしてくださるのですか? 」
突然の問いかけに一瞬サラは驚いたようだったが、すぐにその顔には微笑が浮かぶ。
「決まっています。あなたは、主が護りたい……大切だと思っている存在だからです」
主の意に従うのが我々の役目だと言うサラに、だがアウロラは足を止めた。
そして、ためらいがちに口を開いた。
「それでは、サラ様はお辛くないのですか? 」
「私の役目は、主の剣であり盾……道具であることです。それ以上でも以下でもありません」
即答と言っても良かった。
けれど、サラの顔にはどこか寂しげな微笑が浮かんでいる。
それを目にしたアウロラは、サラが心の内に秘めた想いを、痛いほど理解した。
「……申し訳、ございません……」
けれど、サラは再びアウロラの手を取り歩み始める。
「なぜ謝るのですか? 私は生まれながらの役割を果たすだけのこと。巫女殿もそうでしょう? 」
と、道すがらサラは自らの生い立ちを語り始めた。
武門の家柄に生まれたこと。
最初のコメントを投稿しよう!