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跡取りと目されていた兄が魔物討伐で亡くなったこと。
年の離れた弟がいるが、身体が弱く武人には向いていないこと……。
などと話を聞いているうちに、二人は宴が催されている広間のすぐそばまでやって来ていた。
耳をすまさなくとも、賑やかな笑い声や楽しげな話す声が聞こえてくる。
サラはアウロラを招き寄せ、その耳元で囁いた。
「主の隣におられるのが、大主エルト・ディーワ様。下座で一際賑やかなのが、その弟御カイ・ベルグ様です。では、手はず通り」
それでもなお不安げなアウロラに向かい、サラは励ますように笑いかける。
大きく息をつきうなずき返すと、アウロラは意を決したように宴の席へ足を向けた。
*
これほどの人数を前にするのは、アウロラにとって初めてのことだった。
宴席へと向かう足が、わずかに震える。
賑わいが近づくにつれ、会話の内容が途切れ途切れに耳に入ってくる。
──……少女がうずくまって……羽根が……甲高い声で笑い……──
──……アルタミラ殿の消息を……──
──兄者の許しがいただければ……──
はたと、アウロラの足が止まった。
どうやら、べヌス達は調和者アルタミラの話をしているらしい。
その名は、さすがのアウロラでも知っている。この世界のありとあらゆる物の調和を司る神だ。
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