Ⅲ.出城にて

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 跡取りと目されていた兄が魔物討伐で亡くなったこと。  年の離れた弟がいるが、身体が弱く武人には向いていないこと……。  などと話を聞いているうちに、二人は宴が催されている広間のすぐそばまでやって来ていた。  耳をすまさなくとも、賑やかな笑い声や楽しげな話す声が聞こえてくる。  サラはアウロラを招き寄せ、その耳元で囁いた。 「主の隣におられるのが、大主エルト・ディーワ様。下座で一際賑やかなのが、その弟御カイ・ベルグ様です。では、手はず通り」  それでもなお不安げなアウロラに向かい、サラは励ますように笑いかける。  大きく息をつきうなずき返すと、アウロラは意を決したように宴の席へ足を向けた。       *  これほどの人数を前にするのは、アウロラにとって初めてのことだった。  宴席へと向かう足が、わずかに震える。  賑わいが近づくにつれ、会話の内容が途切れ途切れに耳に入ってくる。 ──……少女がうずくまって……羽根が……甲高い声で笑い……── ──……アルタミラ殿の消息を……── ──兄者の許しがいただければ……──  はたと、アウロラの足が止まった。  どうやら、べヌス達は調和者アルタミラの話をしているらしい。  その名は、さすがのアウロラでも知っている。この世界のありとあらゆる物の調和を司る神だ。
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