12人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
やがて、何やら得心がいったようにうなずくと、ディーワはアウロラに向き直る。
「……巫女殿、一つ頼みがある。ベヌスはかけがえのない我が友。どうか支えてやって欲しい」
思いもかけない言葉だった。
あふれてくる涙をこらえながら、アウロラは顔を上げる。
「そんな……もったいないお言葉を賜りまして、嬉しゅうございます。この命、喜んで……」
「待て待て。気持ちは嬉しいが、軽々しく命を口にするのはやめよ。それに今お前に死なれては困るぞ」
慌ててアウロラの言葉をさえぎるベヌス。
だが、更に乱入する者がいた。
「さては陛下も俺と同様、巫女殿がいなければ城に帰れないんじゃないか? だから巫女殿を帯同させたのだろう? 」
そんなやり取りを見ていて、アウロラは思わず微笑を浮かべていた。
彼らは確かに強い絆で結ばれている。
それは恐らく友情と信頼と言った類のものだろう。
そんな彼らを、アウロラはうらやましく思った。
これ以上長居をしては、せっかくの邂逅を邪魔することになる。
そう考えたアウロラは、一礼しその場を後にしようと立ち上がる。
と、ベヌスからどこへ行く、と声をかけられた。
「城下へ使いの手配を……それに、これ以上やんごとなき皆様のお側にいるのは、申し訳……」
最初のコメントを投稿しよう!