Ⅲ.出城にて

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「そなたは決して卑しくはない。なぜそこまで自らを貶める? 瞳の色など気に病むに値しないことは、もうわかっただろう? 」  その言葉は、ベヌスの本心であることは明らかだった。  心から自分の事を思ってくれていることが、アウロラには痛いほど伝わってきた。  けれど……。   「生き方を変えるのは、難しゅうございます」  言ってしまってから、アウロラは後悔した。  恐らくベヌスだけではなく、客人も怒らせてしまっただろう。  頭を垂れたまま、怒声が飛んでくるのを待つ。  けれど沈黙を破ったのは、いささか間の抜けた声だった。 「巫女殿は、美声なのか? 」  ハッとして、アウロラは顔を上げる。  その視線の先には、照れ笑いを浮かべる大主の弟カイ・ベルグの姿があった。  しばし、アウロラはその顔を見つめていたが、慌てて返答する。 「そう言う訳では……。ただ、己の思うままを旋律に乗せて歌うのみにございます」  そうか、とうなずくと、カイは人好きのする笑顔を向けてくる。 「実は、恥ずかしながら最近月琴をかじりはじめたのだが、一人で爪弾いているだけではちっとも面白くない。ついては巫女殿の伴奏をさせてはいただけないか? 」  思いよらぬ言葉に、アウロラは慌てて首を左右に振る。
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