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「ところで探検家様」 「?」 「他に誰がいると言うのです。貴方です、貴方」 「???」 「スノウサイダーをがぶ飲みしている」 「俺?」 「はい」 「俺ですか?」 「はい」 俺は探検家ですか? じゃなくて、じゃなくて。俺、探検家だなんて一言も言ってないのですが? え? 誰がそんなこと言ったの? 誰? あ、言ったわ。酔ってたけど、ふざけて言ったわ、俺。 「お嬢様から聞きましたよ?」 ほら、吸血鬼お嬢様ー! 「バカなことを仰っていらっしゃるとか」 ほら、吸血鬼お嬢様ー!! 「世界征服を企んでいるとか」 え、吸血鬼お嬢様? 「まずは第一歩として何年も前に卒業した学校から攻めていこうとか」 えええ? 吸血鬼お嬢様??? 俺、それは言ってないよ?むしろそれって、 「ということをお嬢様が仰っていました」 ほら! ほら! お嬢様がそうしたいって話でしょ?! 「そこで。偶然屋敷にやって来た後輩ちゃんをしもべにして」 「あ、そこで俺ですか」 でも、俺が何年も前に卒業した学校ってこの街にある学校なんですけど。お嬢様の卒業した学校ってどんなモンスター学校? 「後輩ならいいだろうとのことです」 「吸血鬼の後輩さんですか」 「だから、貴方のことですって」 ええええええー。俺の学校ってそんなモンスター学校だったんだー。 「変なことを考えているでしょう?」 そして庭師にバレる。今度吸血鬼お嬢様に会ったら俺、生きて帰れるかな。生きて返してくれるかな。無理だよね。 ヤバい先輩に目をつけられたもんだ。 「そこで。学校を守るドラゴンを餌付けしたいので、好物を教えろと」 吸血鬼、ドラゴンを餌付けする。 バカなことを言ってるのはお嬢様の方だ! 俺たちの卒業した学校にはドラゴンがいる。 それはそれは大きくて。 ヤンチャで。 子どもが大好きで。いつでも俺たちの仲間で。さみしがり屋で。俺たちよりも年下で。 コロン、コロンと鳴く。 大きな子ども。 「さあ、お客様。貴方のお話をお聞きしましょう」 主人公は俺たち。 いらっしゃいませ、お客様。なんちゃって。 この庭師に話してやりましょうかね。学校の上を飛び回っているあのドラゴンの話。 テーブルの上にはあの時の三人を待つコップが並んでいる。中身が注がれるまでにはまだ時間があるようだ。 それまでは、俺の話を聞いていただきましょう。 夏の空を少女がシャンシャン踊っていた。
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