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「なんの役にも立たない机上の空論、か……」
「おい、事実を言うな、事実を」
「その事実は、変えられると思うか?」
子供時代から今日までを振り返ってみても、似たような意味の質問は何度も繰り返している気がする。
何度も、何度も、何度も。
その度に、ケイクは笑いながら言う。
「魔法を現実のものにして、変えてみせるさ。おれの生涯をかけてでもな」
ああ、やっぱりこの眼だ。
子供の頃から変わらないたった一つの興味関心に、当たり前のように全精力を注ぎ込める強くてまっすぐな眼。眩しいくらいの狂気を秘めたこの眼を見るたびに、羨望を覚え、同時に劣等感で死にたくなる。
唇を舐めたケイクのパスタ皿は、いつしか空になっていた。自分が掻き集めた最後の一口は、ほとんど味がしなかった。来年の今頃には、自分はアーサーレオの本国で自由騎士として暮らし、ケイクはサウスヴェール国立大学の大学院に進んでいる。もう子供ではない自分達は、初めて違えた道の先でも問題なく生きていくのだろう。
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