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第1話 腐れ縁…side奈麻
チッ。
彼がちゃんと立ち去るまで我慢したのは、えらいと思う。小さくはない舌打ちをした後、少しでも可愛く見えるように整えた長い前髪(2時間はかけた!)をわしゃわしゃと乱した。
「またか」
そう、まただ。今回は念入りに準備をした。彼とお近づきになるために努力もした。彼の好みだってバッチリ調べ上げた。それなのに、だ。
『好きです』
私の渾身の告白(タイミングだってバッチリだったはず!)は
『ごめん』
呆気なく散った。それだけなら仕方がない。
『好きな子がいるんだ』
その聞き覚えのあるセリフに失恋のショックよりも苛立ちが勝った。……まさか。
『誰か、聞いてもいい?』
『うん。俺、凜ちゃんの事が好きなんだ』
私の好きな人は、違う女を想ってはにかんだ。
小川凜。そう、このいけすかない女は、いつも私の邪魔をするのだ。私の好きになった男は必ずこの小川凜を好きだって言うのだから納得いかない。
今回は彼を好きだって凜に気づかれないように細心の注意を払ったつもりだった。
それなのに、それなのに、何でぇえええ!?
頭の中で、凜の三日月の目がこちらを見てせせら笑っている気がした。その昔、私が振られた相手が凜に告白した。その時の屈辱を忘れない。
『告白されちゃったあ。どうしよう、相手のことよく知らないからあ』
と言って断りやがった。
ある時は
『お友達から』
なんて保留したり。結局保留のまま振った。
またある時は
『うーん、まあ、顔は好みだし付き合ってみよっかな』
と、付き合って直ぐに『何か違う』と言って振った。
とにかく、とにかく、私にとって、やっかいで嫌な女なのだ。
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