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「ごめんね、奈麻ちゃん」
更に、こんな風に謝られた時の屈辱ったらありゃしない。
「いいよ、いいよ。仕方がないよ。気にしないで」
私は笑顔を張り付けると、精一杯強がってみせた。
──こんな感じの事をずっと繰り返していた。
凜とは全然仲良くなかった。高1の時に同じクラスになって、いつも同じグループにはいて、みんなと一緒なら会うけど、個人的には会わない。そんな友人関係だった。
いや、むしろ苦手なタイプだったと思う。ふんわりした女の子らしい男好きする見た目。鼻にかかったような甘ったるい声。黒目がちな大きな瞳は長い睫毛に縁取られ、その睫毛だって、さらに端々まで綺麗にマスカラが塗られて、カールさせられていた。この高温多湿な気候下においても、常に睫毛は上向きだ。
唇だって常に荒れ知らずのツヤツヤ。そして、その唇の端に小さなホクロがあるのだ。
『唇のホクロなんて、珍しいでしょ。恥ずかしい!』なんて顔を覆ってたけど、わざわざ自分で言うってことは、チャームポイントだと思っているに違いなかった。ほっそりした指、爪の先までお手入れされていた。
これらが、全て男子は気づかない程度に施されているのだ。
確かに、可愛い。口元を押さえる仕草も小首をかしげて見せる仕草も、顔にかかる髪を耳にかける仕草も。全部、可愛いのだ。
「え、凜ちゃん化粧してるの?」
「ええ、してるよ。バッチリ。ものすごいしっかりしてるよー?」
本当の事を言ってるのにイラつくのはなぜだろうか。
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