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入学から1ヶ月が過ぎたある日のホームルーム。後ろの席にプリントを渡すために振り向いて、宮嶋くんと目が合った。
すぐに目をそらされたけど、廊下側に座る私の方をじっと見ていた彼と、一瞬だけ目が合った。
もしかして、私を見てた?
一瞬だけよぎった考えを、ため息と共に否定する。
私みたいな地味子、彼が見ている訳がない。
そう思って、そんなことはすぐに忘れてその日は終わった。
翌日。また、宮嶋くんと目が合った。さらにその翌日も。その後も何回も。プリントを後に渡す時や、何気なく後ろを振り返った時。チラリと宮嶋くんの方を見ると、宮嶋くんも私の方を見ていた。彼は私の視線に気付くと、見ていたことをごまかすように、目をそらす。
私を見ていた訳じゃないと思う。そう思うけど、宮嶋くんが私の方を見ていたのは、間違いなかった。
あんなカッコいい人の視界に、私なんかが入ってた。
そう意識した途端、急に自分の容姿が恥ずかしくなった。
いくつもアホ毛が浮いたまとめただけの髪、少しカサついた唇、手入れをしたことのない凛々しいほどに太い眉毛。最近頬に増えたニキビ。しかも、宮嶋くんの席から見える左側には、特に大きく目立つのが1つ。
多少のニキビは、誰にでもある。私より、もっとひどい子もいる。今、ちょっと荒れているだけで、そのうちに治る。そんなふうに思っていた自分に、無性に腹が立った。
だってカッコいい宮嶋くんには、小さなニキビ1つ無さそうなんだもの。
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